実家の解体費用:見積もりで確かめることと、費用が変わる要因
出典の確認日: 2026年10月9日
この記事の結論
解体の費用は、家の大きさや造りのほか、残った荷物、塀や庭木などの工事、アスベストの調査と除去で変わります。 消費者向けの相場として、国や公的機関がまとめたものは見つかりませんでした。同じ条件で複数の見積もりを取り、何が入っているかを比べましょう。 壊す前に、今のまま売る場合の査定も取り、補助があるかを市区町村に聞いておきます。
壊す前に決めること
相続放棄を考えているとき
相続した家を壊すことや、家に残った荷物を処分することは、相続財産の処分に当たることがあります。
相続放棄を考えている場合は、家や家財を売る・処分する前に、裁判所の案内か専門家に確かめてください。相続財産を処分すると、相続放棄ができなくなることがあります(民法921条1号)[1][2]。
名義と、相続人みんなの考え
家を壊すかどうかを決めるのは、家の持ち主(名義の人)です。
名義が亡くなった親のままなら、家を受け継ぐ人(相続人)どうしで考えをそろえましょう。名義の確かめ方や相続登記は、法務局の案内か、司法書士に相談できます。
自治体の解体の補助でも、家の持ち主が複数いる場合は、全員の同意を条件にしている例があります(弘前市)[3]。
壊さずに売る道と比べる
解体すると、その費用を先に出すことになります。
壊さずに、今のままの家を買い取る会社もあります。解体の見積もりと、今のままでの査定を並べて比べましょう。
比べ方は、壊す前に査定と見積を両方取るにまとめています。相談先の例は、このページの「相談先」にあります。
国に土地を引き取ってもらう制度を考えるなら
相続した土地を、国に引き取ってもらうよう申請できる制度があります(相続土地国庫帰属制度)。ただし、建物がある土地は申請できません[4]。
建物を壊しても、ほかの条件で引き取ってもらえないことがあります[4]。この制度を考えるなら、解体する前に法務局に相談してください。相談は、全国の法務局・地方法務局で受け付けています[4]。
売るときの税の特例を考えるなら
亡くなった人が住んでいた家を相続して売るとき、条件に合えば、税金が軽くなる特例があります[5]。条件と期限があるので、壊す前に確かめましょう。主な条件のうち、5つを挙げます[5]。
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家であること
- 売るときに耐震の基準を満たしているか、家を取り壊すこと(売った翌年2月15日までに、買った人が工事や取り壊しをする場合も含む)
- 亡くなった人が1人で住んでいた家であること(亡くなる直前に、ほかに住んでいた人がいない)
- 相続してから売るまでに、貸したり、住んだり、事業に使ったりしていないこと
- 亡くなった日から3年たつ日がある年の、12月31日までに売ること。あわせて、2027年12月31日までに売ること
ほかにも条件があります。くわしくは国税庁の案内を見て、使えるかどうかは税理士か税務署に確かめてください[5]。
解体の費用が変わる要因
この記事では、解体の金額の目安を書いていません。消費者向けの相場として、国や公的機関がまとめたものが見つからなかったためです。
下の要因を、見積もりで1つずつ確かめてください。片付けや売る費用も含めた全体は、実家じまいの費用の全体像で順に見られます。
建物の造りと大きさ
木造か、鉄骨か、鉄筋コンクリートかで、工事の手間が変わります。床面積が広いほど、壊す量も増えます。
床面積が80㎡以上だと、届出や報告が要ります。くわしくは、下の「解体業者の選び方」で書いています。
残った荷物(残置物)の量
家の中に物が残っていると、その処分の費用がかかります。先に片付けを別に頼むか、解体の見積もりに含めるかで、金額が変わります。
環境省は、家庭の廃棄物を回収するには、市区町村の「一般廃棄物処理業」の許可か、市区町村の委託が必要だと案内しています[6]。「産業廃棄物処理業」の許可や「古物商」の許可では、家庭のごみは回収できません[6]。
売れる物を買い取ってもらうことと、ごみを回収してもらうことは、別のことです。
自治体の解体の補助では、家財や残置物の処理費を対象にしていない例があります(長野市)[7]。
片付けから解体までの順番は、遺品整理から解体までの順番にまとめています。
相続放棄を考えている場合は、荷物を処分する前に、「相続放棄を考えているとき」を読んでください。
付帯工事(塀・門・庭木・物置・カーポート・浄化槽など)
建物のほかに、取り除く物があると、その分の工事が加わります。
どれが見積もりに入っているかを、現地で業者と一緒に指さしながら確かめましょう。項目ごとの金額も見ておきます。
アスベスト(石綿)の調査と除去
建物を解体するときは、工事の規模の大小にかかわらず、石綿が使われているかを前もって調べる「事前調査」が要ります[8]。
2023年10月1日から、建物の事前調査は、資格を持つ人(建築物石綿含有建材調査者など)が行う決まりになりました[8][9]。
調査の結果、石綿の除去が要るときは、その分の費用と工事の期間が加わります。
重機が入れるか・道の広さ・隣の家との近さ
重機が家の前まで入れるか、隣の家とどのくらい離れているかで、工事の進め方が変わります。
これは現地を見ないと決まりません。業者に現地を見てもらったうえで、見積もりを出してもらいましょう。
壊したあとの整地と、地中から物が出たときの扱い
壊したあとの土地を、どこまで平らにならすか(整地)で、費用が変わります。
地中から古い基礎やがれきなどが出てくると、追加の費用がかかることがあります。どんなときに追加の費用が出るかを、契約の前に書面で確かめましょう。
見積もりで確かめること
| 見積もりの項目 | 先に出すお金 | 見積もりに入っているか確かめること | 手間 | 向いている事情(この項目を特に確かめたい家) |
|---|---|---|---|---|
| 解体工事の本体 | あり(見積もりで確かめる) | 建物の造り・床面積・重機が入れるか・整地まで含むか | 現地を見てもらうときの立ち会い・近所へのあいさつ | すべての家 |
| 残った荷物(残置物)の処分 | あり(見積もりで確かめる。補助の対象外の例あり) | 解体の見積もりに含むか、別に片付けを頼むか。家庭のごみを回収する業者の許可か委託 | 残す物の仕分け | 荷物が多く残っている |
| 付帯工事(塀・門・庭木・物置・浄化槽など) | あり(見積もりで確かめる) | どの付帯物が見積もりに入っているか、項目ごとの金額 | 現地で一緒に指さして確かめる | 庭・塀・物置・浄化槽がある |
| アスベスト(石綿)の調査と除去 | あり(調査はすべての解体工事で要る。除去は調査の結果による) | 事前調査の費用と、除去が要るときの扱い。結果を書面で説明してもらえるか | 書面の説明を受ける | 古い建材が使われていそうな家 |
| 届出と滅失登記 | 場合による(届出・登記を業者や専門家に頼むなら費用) | 建設リサイクル法の届出(80㎡以上)を誰が用意するか、滅失登記を誰がするか | 届出・登記の書類 | 床面積が80㎡以上、登記されている建物 |
| (比べるために)壊さずに今のまま売る | なし(査定は無料と書く会社もある。一部対象外の会社もある) | 荷物・建物のままで査定してもらえるか | 問い合わせ・現地の確認の立ち会い | 解体費を先に出せない、更地にする理由がまだない |
解体業者の選び方
建設業の許可か、解体工事業の登録があるか
解体工事をする業者には、次の決まりがあります(神奈川県の案内から)[10]。
- 土木・建築・解体工事業の建設業許可を持たずに解体工事をするには、都道府県知事の登録が要ります。
- 請負金額が500万円以上の解体工事は、建設業許可が要ります(建築一式工事に含まれる解体工事は1,500万円以上)。
- 複数の都道府県で解体工事をするときは、それぞれの都道府県知事の登録が要ります。
見積もりを頼むときに、許可か登録の番号を聞いておきましょう。わからないときは、家のある都道府県の窓口で確かめられます。
相談先の例は、このページの「相談先」にあります。
アスベストの事前調査の結果を、書面で説明してもらう
元請業者(工事を直接請け負う業者)は、事前調査の結果を、発注者(工事を頼む人)に書面で説明する必要があります(仙台市の案内から)[11]。
解体する部分の床面積が80㎡以上の工事では、元請業者が、調査の結果を労働基準監督署に報告します[8]。
説明の書面は、受け取って保管しておきましょう。
建設リサイクル法の届出
床面積の合計が80㎡以上の建物を解体するときは、発注者か自主施工者が、工事を始める7日前までに届け出ます(静岡市の案内から)[12]。
家を解体するなら、ふつうは工事を頼むあなたが発注者です。届出先は自治体で違うので、家のある自治体で確かめてください。
書類を誰が用意するか、どこに出すかを、見積もりの段階で業者に聞いておきましょう。
同じ条件で、複数の見積もりを取る
建物・付帯工事・残った荷物・整地の範囲をそろえて、複数の業者に見積もりを頼みます。
項目ごとに並べると、どの見積もりに何が入っていないかがわかります。
見積もりと請求が食い違うなど、契約で困ったときは、消費者ホットライン「188」に電話すると、近くの消費生活センターなどの相談窓口を案内してもらえます[13]。
解体の補助(自治体ごとに違う。例を2つ)
解体の補助は、あるかどうか、金額、条件が自治体ごとに違います。ここでは例を2つ挙げます。ほかの自治体での目安ではありません。
例1 長野市「老朽危険空き家の解体工事補助金」
- 限度額は100万円です。所得の条件に当てはまる人には、上乗せがあります[7]。
- 交付が決まったあとに着手する工事に限ります。工事の契約後や、解体が終わったあとのものは対象になりません[7]。
- 家財や残置物の処理費は、補助の対象になりません[7]。
- 2026年度(令和8年度)は、予算の上限に達したため、受付を終えています[7]。
例2 弘前市「令和8年度 弘前市老朽空き家等除却促進事業費補助金」
- 取り壊し(除却)にかかる費用の80%で、限度額は50万円です[3]。
- 10戸程度で、予算の範囲内の先着順です[3]。
- 申請の期間は、2026年5月7日から12月28日までです[3]。
- 市内の業者で、建設業許可か解体工事業の登録がある業者の工事が対象です[3]。
- 家の持ち主が複数いる場合は、全員の同意が要ります[3]。
- 前もって市との相談(事前協議)が要り、交付が決まる前に契約すると補助を受けられないとされています[3]。
補助があるかは、工事の契約の前に聞く
補助の有無や条件、受付の時期は、年度と予算で変わります。
工事の契約の前に、家のある市区町村の空き家の窓口で聞いてください。
壊したあとの手続きと税
建物の滅失登記
建物を壊したら、建物がなくなったことを登記します。これを「滅失の登記」といいます。
建物の名義の人は、壊した日から1か月以内に申請することになっています(不動産登記法57条)[14]。
申請は、家のある所を受け持つ法務局にします。申請書の様式は、法務局のページにあります[15]。土地家屋調査士などの専門家に頼むこともできます。
名義が亡くなった親のままのときの進め方は、法務局で確かめてください。
固定資産税の住宅用地の特例
住宅が建っている土地は、固定資産税が軽くなります(住宅用地の特例)。毎年1月1日の時点で、住宅の敷地として使われている土地が対象です[16]。
そのため、年の途中で住宅を壊して更地にすると、次の1月1日の時点では住宅用地とみなされず、原則としてこの特例が受けられなくなります[17]。
また、管理が行き届かない空き家として市区町村の指導を受け、従わずに「勧告」を受けた場合も、この特例が受けられなくなります[16]。
壊したあとの税がどう変わるかは、家のある市区町村の資産税の窓口に確かめてください。
壊す前に、壊さずに売る場合とも比べておくと、判断の材料になります。壊す前に査定と見積を両方取るもご覧ください。
先に知っておきたい注意点
相続放棄を考えているとき
相続した家を壊す前に、「相続放棄を考えているとき」を読んでください。家や家財の処分は、相続放棄ができなくなる理由になることがあります[1][2]。
見積もりにない追加の費用
工事が始まってから、見積もりにない費用を求められることがあります。
どんなときに追加の費用が出るかを、契約の前に書面で確かめましょう。困ったときは、消費者ホットライン「188」に相談できます[13]。
解体費を先に出せないとき
解体の費用を先に出せないときは、壊す前に、ほかの手放し方を確かめる方法があります。
解体費を先に出せないときの相談先をまとめています。
相談先
紹介料のない相談先
- 家庭裁判所: 相続放棄を考えているときは、裁判所の案内を見てください[2]。
- 市区町村の空き家の窓口: 解体の補助があるか、受付の時期や条件を聞けます。窓口の名前は自治体で違います。わからないときは、役所の代表電話で「空き家の相談」と伝えて、担当の窓口を聞いてください。
- 都道府県の建設業・解体工事業の登録の窓口: 業者が許可か登録を持っているかを確かめられます[10]。
- 法務局: 滅失の登記の相談や、国に土地を引き取ってもらう制度の相談ができます[4][15]。
- 消費者ホットライン188: 見積もりや請求で困ったときに、近くの相談窓口を案内してもらえます。くわしくは消費者庁の案内をご覧ください[13]。
このサイトが相談先をどう並べているかは、このサイトの約束に書いています。
出典・更新履歴
出典
- e-Gov 法令検索「民法」第921条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (確認日: 2026-10-09)
- 裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html (確認日: 2026-10-09)
- 弘前市「令和8年度 弘前市老朽空き家等除却促進事業費補助金のご案内」(PDF) https://www.city.hirosaki.aomori.jp/kurashi/akiya/R8chirashi.pdf (確認日: 2026-10-09)
- 法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html (確認日: 2026-10-09)
- 国税庁 No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm (確認日: 2026-10-09)
- 環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」 https://www.env.go.jp/recycle/kaden/tv-recycle/qa.html (確認日: 2026-10-09)
- 長野市「老朽危険空き家の解体工事補助金」 https://www.city.nagano.nagano.jp/site/sinseikaihatu/407503.html (確認日: 2026-10-09)
- 厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト「工事の元請業者のみなさまへ」 https://www.ishiwata.mhlw.go.jp/business/prime-contractor/ (確認日: 2026-10-09)
- 環境省「建物を壊すときにはどうしたら良いの?」 https://www.env.go.jp/air/asbestos/index6.html (確認日: 2026-10-09)
- 神奈川県「解体工事業登録」 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/u2h/cnt/f531856/p870134.html (確認日: 2026-10-09)
- 仙台市「石綿事前調査について」 https://www.city.sendai.jp/taiki/kurashi/machi/kankyohozen/kogai/ishiwata/jizenchosa.html (確認日: 2026-10-09)
- 静岡市「建設リサイクル法対象工事に関する届出方法」 https://www.city.shizuoka.lg.jp/s2574/s007762.html (確認日: 2026-10-09)
- 消費者庁「消費者ホットライン」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/ (確認日: 2026-10-09)
- e-Gov 法令検索「不動産登記法」第57条 https://laws.e-gov.go.jp/law/416AC0000000123 (確認日: 2026-10-09)
- 法務局「不動産登記の申請書様式について」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html (確認日: 2026-10-09)
- 国土交通省「空き家対策 特設サイト」(住宅用地特例) https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/articles/2024020105.html (確認日: 2026-10-09)
- 富山市 よくある質問「家屋(住宅)を取り壊して更地にしたら、土地の固定資産税が急に高くなったのはなぜですか。」 https://www.city.toyama.lg.jp/faq/1008447/1009955/1009484.html (確認日: 2026-10-09)
- ラクウル 公式サイト(広告主) https://raku-uru.org/ (確認日: 2026-10-09)
更新履歴
- 2026-10-09: 公開前の原稿を作成
- 見直し予定: 2027-04(長野市・弘前市の補助は年度で変わるため)
出典の確認日: 2026-10-09