遠方の実家を売る:通う回数を減らす進め方
出典の確認日: 2026年10月9日
この記事の結論
遠方の家を売るとき、現地に行く場面は「名義の確認・値段の確認・契約・引き渡し」に分けられます。 どの場面を任せられるか、現地に行かない方法があるかを、相談する会社に先に聞きましょう。 媒介契約や売買契約の書面は、会社が対応していれば、あなたが承諾したうえで電子で受け取る方法もあります(2022年5月18日から)。
遠方の実家を売るとき、現地に行く場面はどこか
相続放棄を考えている場合は、家や家財を売る・処分する前に、裁判所の案内か専門家に確かめてください。相続財産を処分すると、相続放棄ができなくなることがあります(民法921条1号)[11][12]。
家を売るまでに、現地に行くかもしれない場面は、大きく分けて4つです。
- 名義を確かめる
- 値段を聞く
- 契約する
- 引き渡す
どの場面で現地に行くことになるかは、頼む会社や家の状態で変わります。ここでは、場面ごとに「会社や窓口に何を聞くか」をまとめます。
名義を確かめる
まず、家と土地の名義が誰になっているかを確かめます。名義は、法務局で取れる「登記事項証明書」に書かれています。
名義が亡くなった親のままなら、名義を移す手続き(相続登記)が要ります。
相続登記の進め方がわからないときは、法務局の「登記手続案内」で聞けます[3]。
- 予約が要ります(完全予約制)[3]。
- 1回20分以内です[3]。
- 電話、法務局の窓口、ウェブ会議の3つから選べます[3]。
電話かウェブ会議を選べば、出かけずに相談する方法もあります。
相続登記は義務になっている
2024年(令和6年)4月1日から、相続登記が義務になりました[1]。
- 相続で家や土地を取得したことを知った日から、3年以内に登記します[1]。
- 2024年4月1日より前の相続で、まだ登記していない家や土地は、2027年(令和9年)3月31日までに登記します[1]。
- 正当な理由なく登記しないと、10万円以下の過料(行政上のお金の罰)が科されることがあります[1]。
家を売るときは、売る前に相続登記が要ります[2]。親の名義のままでは、買う人へ名義を移せないためです。
遠方に住んでいると、書類のやりとりに時間がかかることがあります。売ると決めたら、早めに法務局か司法書士に相談しましょう。
値段を聞く
値段の見積もり(査定)は、相続登記の手続きの途中でも頼めます。
家の中や周りを見る「現地の確認」に、立ち会いが要るかどうかは、会社ごとに違います。頼む前に、次のことを聞いておきましょう。
- 現地の確認に、立ち会いが要るか
- 鍵を預ける場合、どう預けて、どう返してもらうか
- 結果を、電話・郵送・メールのどれで受け取れるか
契約と引き渡し
契約や引き渡しのときに、現地や会社の店まで行くかどうかも、会社ごとに違います。
不動産の取引の書面は、2022年(令和4年)5月18日から、電子の書面で受け取れるようになりました[4]。
売る人が受け取る主な書面は、次の2つです。
- 不動産会社に買い手探しを頼むときの「媒介契約」の書面[5]
- 家を売る「売買契約」の書面[5]
どちらも、会社が対応していれば、あなたが承諾したうえで、紙の代わりに電子で受け取る方法があります[5]。紙で受け取りたいときは、そう伝えてかまいません。
会社には、次のことを聞いておきましょう。
- どの書面を電子で受け取れるか
- 契約の署名は、どこで、どの方法でするか
- 引き渡しの日に、現地に行く必要があるか
通う回数を減らす進め方
家の近くの不動産会社に仲介を頼む
不動産会社に買い手を探してもらう売り方を「仲介」といいます。家の近くの会社は、その地域の事情に詳しいことが多いです。
遠方から頼むときは、内覧(買いたい人が家を見に来ること)にどう対応するかを決めておきます。鍵を会社に預けるなら、預け方と返し方を書面で取り決めておくと安心です。
自分の住む近くの会社に頼む
会って相談しやすいのが良い点です。
ただし、実家のある地域を扱えるかは、会社によって違います。最初に「この地域の家を扱えますか」と聞きましょう。
今の状態のまま買い取る会社に相談する
家を、今の状態のまま買い取る会社があります。荷物が残っていても相談を受ける、としている会社もあります。片付けのために通う回数を、減らせることがあります。
受けられるかどうかは、会社ごと、家ごとに違います。断られることもあると考えておきましょう。
買い取りの値段と、仲介で買い手を探す場合の値段は違います。両方を聞いてから決めてもかまいません。
相続放棄を考えている場合は、家や家財を売る前に、注意点「相続放棄を考えているとき」を読んでください。
- 相談の前に確かめたいことは、買取業者に相談する前ににまとめています。
- 相談先の例は、このページの「相談先」にあります。
複数の会社にまとめて相談する
売るか、壊すか、活かすかを決めきれていないときの方法です。売却・解体・活用について、複数の会社から提案を受け取る形です。
そのため、いくつかの会社から連絡が来ます。
- 相談先の例は、このページの「相談先」にあります。
遠方の会社に頼む前に、免許を確かめる
会ったことのない会社に頼むときは、宅地建物取引業者(宅建業者)かどうかを確かめておくと安心です。
国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で、宅建業者を調べられます[7]。
比べると
| 進め方 | 先に出すお金 | 現地に行く回数 | 手間 | 向いている事情 |
|---|---|---|---|---|
| 家の近くの会社に仲介を頼む | 場合による(片付けてから売るなら片付け代) | 会社と相談(内覧・契約・引き渡しの立ち会いを、どこまで任せられるかで変わる) | 鍵の預け方・内覧の対応の取り決め | 時間をかけても買い手を探したい |
| 自分の住む近くの会社に頼む | 場合による | 家の地域を扱えるかで変わる | 家の地域を扱えるかの確認 | 会って相談したい |
| 今のまま買い取る会社に相談 | なし(査定は無料。一部対象外の会社もある) | 現地の確認に立ち会いが要るかは会社に聞く。片付けに通う回数は減ることがある | 問い合わせ・現地の確認 | 片付けに通えない・早めに手放したい |
| 複数の会社にまとめて相談 | なし(提案を受けても料金はかからないと公式サイトに記載) | 会社ごとに違う | 複数の会社とのやりとり | 売るか・壊すか・活かすか決めきれていない |
現地に行く回数は、家と会社で変わるため、数字では書いていません。
売るときに出ていくお金
仲介の手数料には上限がある
仲介で売れたときは、不動産会社に手数料(媒介報酬)を払います。手数料には、国が決めた上限があります[6]。
売る値段が800万円以下の家や土地には、特例があります。2024年(令和6年)7月1日から、会社は原則の上限を超えて、30万円の1.1倍まで手数料を受け取れるようになりました[6]。
そのため、値段の低い家では、原則より高い手数料を求められることがあります。
会社は、媒介契約を結ぶときに、上限の範囲で手数料の額を前もって説明し、あなたの合意を得る必要があります[6]。額を聞いて、納得してから契約しましょう。
会社が直接買い取る場合は、仲介ではありません。どんな費用がかかるかは、契約の前に書面で確かめてください。
現地へ行く交通費と、片付けの費用
遠方の家では、現地へ行く交通費がかかります。片付けを業者に頼むなら、その費用もかかります。
どちらも家や地域で違うので、この記事では金額を書いていません。
- 遠方から片付けを頼む話は、遠方から片付けを頼むときにまとめています。
相続放棄を考えている場合は、家財を処分する前に、注意点「相続放棄を考えているとき」を読んでください。
売ったあとの税(相続した空き家の3,000万円の特例。期限は「亡くなった日から3年たつ年の年末まで」)
家を売って利益が出ると、所得税などがかかることがあります。
相続した空き家を売ったときは、条件に合えば、売って得た利益から最高3,000万円を差し引ける特例があります[10]。2024年(令和6年)1月1日以後の売却で、家と土地を相続した人が3人以上のときは、最高2,000万円です[10]。
売る時期に決まりが2つあります[10]。
- 相続が始まった日(親が亡くなった日)から3年たつ日の、その年の12月31日までに売ること
- 2027年(令和9年)12月31日までに売ること
2つのうち、早く来るほうまでに売ることになります。
ほかにも、たとえば次のような条件があります[10]。
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家であること(区分所有の登記がある建物は対象外)
- 売るときに耐震の基準を満たしているか、家を取り壊すこと(売った翌年2月15日までに、耐震の基準を満たすか取り壊した場合も含む)
- 亡くなる直前に、亡くなった人のほかに住んでいた人がいないこと
- 相続のあと売るまでに、人に貸したり、住んだり、事業に使ったりしていないこと
- 売る値段が1億円以下であること
相続した家を売ったときの「取得費の特例」とは、一緒に使えません[10]。
条件はこのほかにもあります。使えるかどうかは、国税庁のページを見たうえで、税務署か税理士に確かめてください。
先に知っておきたい注意点
相続放棄を考えているとき
相続放棄を考えている場合は、家や家財を売る・処分する前に、裁判所の案内か専門家に確かめてください。相続財産を処分すると、相続放棄ができなくなることがあります(民法921条1号)[11][12]。
親が存命で、親の名義の家のとき
親が存命なら、家の名義は親のままです。売るかどうかは、まず親本人の考えを確かめます。
親本人の考えを確かめるのが難しいときは、裁判所の「後見開始」の案内と、法務省の成年後見制度のQ&Aを見てください[13][14]。
この場合は、このページの紹介料のある相談先に進む前に、まずこれらの案内を確かめてください。
「行かずに売れる」と決めつけない
契約や引き渡しの進め方は、会社ごとに違います。
郵送での書類のやりとり、電子の書面、ほかの人に代わりを頼む方法のうち、どれが使えるかは、最初に会社に聞いてください。
一度も現地に行かずに売れるとは限りません。行く必要がある場面を先に聞いておけば、予定を立てやすくなります。
相続した兄弟が遠方に分かれているとき
相続した人が何人もいて、住む場所が離れていることがあります。この場合は、誰が会社とのやりとりの窓口になるかを、先に話し合っておくと進めやすくなります。
話し合いがまとまらないときの相談先は、事情別の相談先にまとめています。
手続きの順番
遠方の家を売るときの、おおまかな順番です。どの段でも、現地に行く必要があるかは、会社や窓口に聞いてください。
- 名義の確認と相続登記(親の名義のままなら): 登記事項証明書で名義を確かめます。親の名義のままなら、売る前に相続登記が要ります[2]。進め方は法務局の登記手続案内で聞けます[3]。
- 値段を聞く: 複数の会社に値段を聞きます。相続登記の手続きの途中でも頼めます。現地の確認に立ち会いが要るかを聞きます。
- 契約(媒介契約・売買契約): 仲介なら、まず媒介契約を結び、買い手が見つかったら売買契約を結びます。会社が買うなら、その会社と売買契約を結びます[5]。どの契約でも、書面を電子で受け取れるか、署名をどこでするかを聞きます。
- 決済・引き渡し: 代金を受け取り、名義を買う人に移して、家を引き渡す段です。この日に現地に行く必要があるかを聞きます。
- 売ったあとの税の確認: 利益が出たら、税の申告が要ることがあります。3,000万円の特例を使いたいときは、売る時期に決まりがあるので、契約の前に税務署か税理士に確かめておきましょう。
相続した家を売る流れは、相続した家を売る順番でもくわしく書いています。
相談先
紹介料のない相談先
- 法務局の登記手続案内: 相続登記の進め方を聞けます。予約が要り、1回20分以内です。電話、窓口、ウェブ会議から選べます[3]。
- 都道府県の宅建協会の不動産無料相談所: 47都道府県の宅建協会にあり、不動産についての一般的な相談と、苦情の相談を受けています[8][9]。電話番号は全宅連の一覧にあります。相談の日や時間は、各協会に確かめてください。
- 国土交通省の宅建業者の検索: 頼もうとしている会社が宅建業者かどうかを、国土交通省の検索システムで調べられます[7]。
紹介料がない相談先でも、無料とは限りません。料金がかかるかどうかは、相談先で確かめてください。
このサイトが相談先をどう並べているかは、このサイトの約束に書いています。
出典・更新履歴
出典
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html (確認日: 2026-10-09)
- 法務省「相続人申告登記について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html (確認日: 2026-10-09)
- 法務局「登記手続案内」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page_000001_00050.html (確認日: 2026-10-09)
- 国土交通省 報道発表「不動産取引時の書面が電子書面で提供できるようになります。」(令和4年4月27日) https://www.mlit.go.jp/report/press/tochi_fudousan_kensetsugyo16_hh_000001_00036.html (確認日: 2026-10-09)
- e-Gov 法令検索「宅地建物取引業法」第34条の2第11項・第37条第4項 https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176 (確認日: 2026-10-09)
- 国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」(PDF) https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001749923.pdf (確認日: 2026-10-09)
- 国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000037.html (確認日: 2026-10-09)
- 全宅連「都道府県宅建協会・不動産無料相談所一覧」 https://www.zentaku.or.jp/association_list/ (確認日: 2026-10-09)
- 全宅連「相談窓口のご案内」 https://www.zentaku.or.jp/about/free_consultation/ (確認日: 2026-10-09)
- 国税庁 No.3306「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm (確認日: 2026-10-09)
- e-Gov 法令検索「民法」第921条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (確認日: 2026-10-09)
- 裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html (確認日: 2026-10-09)
- 裁判所「後見開始」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_01/index.html (確認日: 2026-10-09)
- 法務省「成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji17.html (確認日: 2026-10-09)
- ラクウル 公式サイト(広告主) https://raku-uru.org/ (確認日: 2026-10-09)
- タウンライフ空き家解決 公式サイト(広告主) https://town-life.jp/land/akiya-solution/index.php (確認日: 2026-10-09)
更新履歴
- 2026-10-09: 公開前の原稿を作成
- 見直し予定: 2027年4月(相続登記の「2027年3月31日まで」の期限のため)、2028年1月(空き家の3,000万円の特例の期限 2027年12月31日のため)
出典の確認日: 2026-10-09