一人っ子の実家じまい:ひとりで決めること、人に任せられること
出典の確認日: 2026年10月12日
この記事の結論
- 一人っ子の実家じまいは、兄弟と話し合う手間がない代わりに、決めること・作業・お金・手続きが全部ひとりに来ます。まず「自分で決めること」と「人に任せられること」を分けると、抱える量が見えます。
- 自分で決めるのは、残す物・売るか持ち続けるか・いつまでにの3つです。
- その前に、相続人が本当に自分ひとりかを戸籍で確かめます。親の配偶者が生きていればその人も相続人です。親に前の結婚の子や認知した子がいれば、その人も相続人になることがあります[1]。
- 片付け・売る相談・登記・解体は、人に任せられます。任せる先は種類ごとに違います。
- 親が存命で親の名義の家なら、売るかどうかを決めるのは親本人です。元気なうちに、名義・残したい物・家をどうしたいかを聞いておきましょう。
相続放棄を考えている場合は、家や家財を片付ける・売る前に、注意点「相続放棄を考えているとき」を読んでください。
一人っ子の実家じまいで、ひとりに来ること
兄弟がいる場合は、決めることや作業を分け合えます。一人っ子の場合は、次の4つが全部自分に来ます。
| 来ること | 中身の例 |
|---|---|
| 決めること | 何を残すか・家を売るか持ち続けるか・いつまでに終えるか |
| 作業 | 家の中の片付け・現地での立ち会い・郵便物や公共料金の整理 |
| お金 | 片付け・解体・登記・税の支払い。立て替える人も自分 |
| 手続き | 戸籍を集める・相続登記・売るときの契約 |
兄弟と意見が分かれる心配が少ないのは、一人っ子の進めやすい点です。その分、全部を自分でやろうとすると、仕事をしながら遠くの実家に通う回数が増えます。
実家じまいの全体の手順は、実家じまいの手順に段ごとにまとめています。この記事は、そのうち「誰がやるか」に絞って書きます。
自分で決めること
人に任せられないのは、次の3つです。業者や専門家は案を出してくれますが、決めるのは自分(親が存命なら名義の親)です。
1. 残す物
写真・手紙・形見など、何を残すかは自分にしか決められません。片付けを業者に頼む場合も、残す物は先に決めて、目印をつけておくと作業が進みやすくなります。
2. 売るか、持ち続けるか
売る・貸す・持ち続けるには、それぞれ手間とお金がかかります。持ち続ける場合も、管理に通う・人に頼むなどの手間は自分に来ます。
3. いつまでに終えるか
期限があるものを先に知っておくと、決める順番がつけやすくなります。
- 相続登記: 不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが法律上の義務になっています(2024年4月1日から)[4]。2024年4月1日より前に相続を知った不動産で、まだ登記していないものは、2027年3月31日までに相続登記をする必要があります[4]。正当な理由がないのに登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります[4]。
- 売ったあとの税の特例: 相続した空き家を売ったときの3,000万円の特例には、「亡くなった日から3年たつ年の年末まで」と「2027年12月31日まで」の、早く来るほうまでに売るなどの条件があります[6]。条件の中身は実家じまいの費用の全体像と国税庁のページを見たうえで、税務署か税理士に確かめてください。
相続人が本当に自分ひとりかを確かめる
「一人っ子だから相続人は自分ひとり」とは限りません。民法では、次のように決まっています[1]。
- 亡くなった人の子は、相続人になります(民法887条1項)。
- 亡くなった人の配偶者は、常に相続人になります(民法890条)。
- 子がいない場合に、親などの直系尊属、その次に兄弟姉妹が相続人になります(民法889条1項)。
そのため、たとえば次のような人がいれば、その人も相続人になることがあります。
- 親の配偶者: もう一方の親が生きている場合や、親が再婚していた場合の再婚相手(民法890条)[1]
- 親の前の結婚で生まれた子: 民法887条1項は、亡くなった人の「子」を相続人としています。前の結婚で生まれた子も、亡くなった親の子です[1]。
- 親が認知した子: 民法では、認知は生まれた時にさかのぼって効力を生じるとされています(民法784条)[1]。
確かめ方は、戸籍です。 大阪家庭裁判所の資料では、相続人を確定させるには、少なくとも亡くなった人の出生または10歳程度から死亡までの、連続した戸籍謄本が必要だと説明しています[2]。戸籍は結婚や転籍などで複数に分かれるため、いくつかの自治体から取り寄せることになる場合もあります[2]。
2024年3月1日からは、本籍地以外の市区町村の窓口でも、戸籍証明書・除籍証明書を請求できるようになりました(広域交付)[3]。請求できるのは本人・配偶者・父母や祖父母・子や孫です[3]。
戸籍を見て、ほかに相続人がいるかどうか、いる場合にどう進めるかは、自分ひとりで判断しないでください。法務局・家庭裁判所・司法書士などの専門家に確かめてから、登記や売却に進みましょう。
人に任せられること
自分で決めることが決まれば、作業の多くは人に任せられます。
| 任せること | 任せる先の種類 | 自分に残ること |
|---|---|---|
| 家の中の片付け | 片付けの業者・遺品整理の業者 | 残す物を決める・見積もりの比較・立ち会いの日を決める |
| 売る相談 | 不動産会社(仲介)・今のまま買い取る会社 | 売るかどうか・値段と条件を決める・契約 |
| 売る・解体・活用をまとめて比べる | 複数の会社から提案をまとめて受け取れるサービス | 提案を比べて決める |
| 相続登記 | 司法書士 | 戸籍などの書類をそろえる・依頼する |
| 解体 | 解体の業者 | 見積もりの比較・壊すかどうかを決める |
| 税の相談 | 税理士・税務署 | 売った金額などの書類を渡す |
遠くに住んでいて、現地に行く回数を減らしたいときの進め方は、遠方の実家を売る:通う回数を減らす進め方にまとめています。
どこに相談すればいいか迷うときは、事情別の相談先から探せます。
片付けを業者に頼むときは、家庭のごみを回収できる業者かを確かめてください。環境省は、家庭の廃棄物を回収するには、市区町村の「一般廃棄物処理業」の許可か、市区町村の委託が必要だと案内しています[9]。わからないときは、家のある市区町村のごみの担当に聞いてください。
相続放棄を考えている場合は、家や家財を片付ける・売る前に、注意点「相続放棄を考えているとき」を読んでください。
比べると
| 進め方 | 先に出すお金 | 自分が現地に行く回数 | 手間 | 向いている事情 |
|---|---|---|---|---|
| 全部を自分でやる | 少なめ(ごみの手数料・登記の費用など) | 多い(片付け・立ち会い・手続きのたび) | 大きい | 実家が近い・時間を取れる |
| 片付けだけ業者に任せ、売る相談は自分で | あり(片付け代。金額は見積もりで確かめる) | 中くらい(見積もり・作業・売る相談の立ち会い) | 中くらい | 片付けの量が多いが、売り方は自分で比べたい |
| 売る・解体・活用の提案をまとめて受け取って比べる | なし(提案の受け取りは無料のサービスがある) | 会社による(現地の確認の立ち会い) | 提案を比べて決める手間 | 何から決めればいいか、まだ分からない |
| 今のまま買い取る会社に相談 | なし(査定は無料の会社がある。一部対象外の会社もある) | 少なめ(現地の確認・契約) | 問い合わせ・立ち会い | 遠くて通えない・片付けを先にできない |
親が元気なうちに話しておくこと
親が存命なら、実家じまいの前に聞いておくと、あとでひとりで迷う場面が減ります。
- 家と土地の名義: 誰の名義になっているか。親の名義でないもの(祖父母の名義のままなど)がないか
- 残したい物: 親が子に残したい物、処分してよい物
- 家をどうしたいか: 住み続けたいか、施設などに移ったあとはどうしたいか
- 書類の置き場所: 権利証・固定資産税の通知・保険などの書類がどこにあるか
親が存命で親の名義の家なら、売るかどうかを決めるのは親本人です。 子は、相談先を一緒に調べたり、話し合いに同席したりできます。親本人が決めることが難しそうなときの手続きは、この記事では説明しません。家のある市区町村の地域包括支援センターか、高齢者福祉の担当に相談してください[8]。
親が自分で書いた遺言書を、法務局に預ける制度もあります[5]。くわしくは法務省の案内か、近くの法務局に問い合わせてください。
先に知っておきたい注意点
相続放棄を考えているとき
相続放棄を考えている場合は、家や家財を売る・処分する前に、裁判所の案内か専門家に確かめてください。相続財産を処分すると、相続放棄ができなくなることがあります(民法921条1号)[1][7]。
費用を立て替える前に
一人っ子は、片付けや解体の費用を自分で立て替える場面が多くなります。あとからほかに相続人がいると分かると、立て替えた費用の扱いも話し合うことになります。相続人が本当に自分ひとりかを、お金を出す前に確かめておきましょう。
相談先
紹介料のない相談先
- 法務局: 相続登記の進め方を相談できます。親が書いた遺言書を預ける制度の問い合わせ先でもあります[4][5]。
- 市区町村の戸籍の窓口: 亡くなった親の戸籍を請求できます。本籍地以外の市区町村の窓口でも請求できます(広域交付)[3]。
- 家庭裁判所: 相続放棄は裁判所の案内を見てください[7]。
- 市区町村の空き家の窓口: 空き家の管理や、片付け・解体の補助があるかを聞けます。窓口の名前は自治体で違います。わからないときは、役所の代表電話で「空き家の相談」と伝えて、担当の窓口を聞いてください。
- 地域包括支援センター: 親の暮らしや体のことで困りごとがあるときに相談できます。市町村が設置しています[8]。
紹介料がない相談先でも、無料とは限りません。料金がかかるかどうかは、相談先で確かめてください。
このサイトが相談先をどう並べているかは、このサイトの約束に書いています。
出典・更新履歴
出典
- e-Gov 法令検索「民法」第784条・第887条・第889条・第890条・第921条 https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089 (確認日: 2026-10-12)
- 大阪家庭裁判所 家事第3部遺産分割係「相続人の範囲について」(PDF) https://www.courts.go.jp/osaka/vc-files/osaka/2023nendo/kasai_isanbunkatsu/1_06_ib_sozokuninnohani.pdf (確認日: 2026-10-12)
- 法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00082.html (確認日: 2026-10-12)
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html (確認日: 2026-10-12)
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度について」 https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html (確認日: 2026-10-12)
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm (確認日: 2026-10-12)
- 裁判所「相続の放棄の申述」 https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html (確認日: 2026-10-12)
- 厚生労働省「地域包括ケアシステム」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/ (確認日: 2026-10-12)
- 環境省「廃棄物の処分に『無許可』の回収業者を利用しないでください!」 https://www.env.go.jp/recycle/kaden/tv-recycle/qa.html (確認日: 2026-10-12)
- タウンライフ空き家解決 公式サイト(広告主) https://town-life.jp/land/akiya-solution/index.php (確認日: 2026-10-12)
- ラクウル 公式サイト(広告主) https://raku-uru.org/ (確認日: 2026-10-12)
更新履歴
- 2026-10-12: 公開前の原稿を作成
出典の確認日: 2026-10-12